翼 翔太様作品

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帰り道の魔法使い

 白薔薇が今日も誇らしげに咲いている。ここの薔薇はあっという間に満開になり、知らぬ間に枯れていく。そんな白薔薇が咲き誇っている屋敷の庭で、エレーヌはジャスミンティーを飲んでいた。ふわりと薔薇とジャスミンの香りが鼻を抜ける。翡翠色の水面に...
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境界

足の裏に丸みのある石の感触を感じながら歩を進める。少し力んでしまい、足の下や近くの石が転がり、体のバランスを崩しそうになった。 「おっとっと」  なんとか尻餅をつくことなく、体勢を立て直したカイは進んだ。しばらくすると石には角が立ってゴツゴツしたものに変わってきた。 「こけたら絶対怪我するな、これ」  カイはより慎重に進んだ。
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歌の結び糸

苔と申し訳程度の雑草。ごつごつとした地面と岩壁。それがカテリーナの七歳からの住み家だ。カテリーナの中で一番古い記憶はきらびやかな部屋と長い廊下、シャンデリアのかかった天井だ。かつての家である王都の城には今の政権を握っている男が住んでおり、父親はこの世を去り、母も別れてからはどうなったのか知らない。
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見送る恋

森の中で複数の馬の足音が響く。先頭には女性と男性を乗せた馬、その後ろから追いかけてくるのは、人ならざるものだった。上半身は人だが下半身は馬である、ケンタウロスだ。追いかけられている女性の耳は尖っており、黒い瞳孔も縦に割れている。細やかなレースのドレスは膝上くらいまで引き千切られていた。 「姫様、お戻りくださいっ」
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舞踏会の演奏

ぽろろんっと最後に竪琴の音が鳴った。拍手が起こりマリアーナはお辞儀をした。二つに結っている三つ編みが垂れる。彼女の前に置いてあった箱の中にお金が溜まっていく。そのお金を持ってマリアーナは市場へ向かった。「日持ちのするパンはどれですか?」「...
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氷の花の愛

はらはらと花びらのように雪が舞う。それはこの世界では日常だった。 赤い毛糸の帽子、臙脂色のコートに身を包み、真っ白なスケート靴を持って一人の少女が外に出た。傍らには少女の身長とそう変わらない大きさの狼がいた。 「ディリヒラ」 名前を呼ばれた少女、ディリヒラはふり返った。玄関には母親が立っていた。
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変狼

今夜もどこからか狼の遠吠えが聞こえる。心地よくも恐怖を感じるその声をウォルはベッドの中で聞いていた。「この声は誰だっけ。……そうだ、肉屋のおじさんだ。あの人の声はちょっと低めだから」あちこちから狼の遠吠えが聞こえる。けれど襲われることは決してない。この村に住んでいる人間は、変狼族という一族でだれもが狼に変身できる一族だ。
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不幸見のヴィーゼ

雪のように真っ白な草原がどこまでも続き、満天の星がちかちかと輝いている。そんな夜の白い草原をヴィーゼはどすどすと歩いていた。 「なによなによっ、お父さんとお母さんのばーかっ」 ヴィーゼは手で思いきり白い草を薙ぎ払いながら進む。
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